円空仏(栃尾観音堂)
奈良県吉野郡天川村栃尾
江戸時代、放浪の僧円空は大峯の地で修行されました。寛文十二年から延宝三年までの間に二度入峰し、山上ヶ岳や小篠の宿、笙の窟、鷲の窟など厳しい冬のさなかの越年修行を行っています。この大峯山入峰の時に残された仏像の中に、栃尾観音堂に安置されている聖観音菩薩立像、大弁財天女立像、金剛童子像、護法神像の四体があります。どの像も円空の作風の特徴をよく表しており、見る者を惹きつける穏やかな微笑みをたたえています。小さなほこらに四体もの円空仏が納められていること、また、深い掘りのものは珍しく、特に護法神像のなかでも、彼が初めて彫ったものとして注目されています。円空の作品が群像として見られるのは近畿以西では天川村だけで、非常に保管状態もよく、評価の高い円空の作品が伝えられているのは珍しく貴重です。